今日は動詞について基本的なことをご説明します。
わかりやすくするために無理やり英語の文法用語に当てはめていますが、必ずしも英語と同じ概念とは限りませんのでご注意ください。
過去形(完了形)
アルジェリア方言の動詞の過去形(完了形)の活用を「書く(كَتَبَ:kataba)」という動詞で見ていきます。
人称 | 活用 |
私 | ْكُتَبْت クタブト |
あなた(男) | ْكُتَبْت クタブト |
あなた(女) | كُتَبْتِي クタブティ |
彼 | ْكُتَب クタブ |
彼女 | ْكَتْبَت カトバト |
私達 | كُتَبْنا クタブナー |
あなた達 | كْتَبْتُو クタブトゥー |
彼ら | كَتْبُو カトブー |
(参考資料) An Algerian dialect: Study and Resources
発音についてはこのように聞こえることが多いというだけで、これが絶対正しいというわけではありません。
1人称単数形と2人称単数・男性の発音はほとんど同じで文脈によって判断するしかないようです。
また、フスハーで一所懸命覚えた双数形や2人称複数と3人称複数の女性形が、実際の会話の中ではあまり使われていないと思います。(単に私が聞き取れていないだけかもしれませんが)
複数のアルジェリア方言関連の資料を当たってみましたが、大抵の場合、上記の表のとおりで、省略されていることが多いです。
ですので、単数形(男・女)と複数形(男性形のみ)だけ覚えておけば大体会話は成り立ちます。フスハーに比べて覚えるのがとても楽です。
現在形(未完了形)
現在形で特徴的なのは、1人称単数はヌーンで始まるということです。
フスハーでは普通、1人称単数はアリフで始まり、1人称複数はヌーンで始まりますので、ちょっとややこしいですが、では、アルジェリア方言で1人称複数はどうするの?というと、ネクトゥブーと語尾を伸ばすことで、単数と区別します。
人称 | 活用 |
私 | نكتب ネクテブ |
あなた(男) | تكتب テクテブ |
あなた(女) | تكتبي テクトビー |
彼 | يكتب イェクテブ |
彼女 | تكتب テクテブ |
私達 | نكتب ネクトブー |
あなた達 | تكتبو テクトブー |
彼ら | يكتبو イェクトブー |
未来形
アラビア語のフスハーでは「未来形」というのは特になくて、未完了形に接頭辞سَ(サ)とか سَوفَ (サウファ)などを付ける、あるいは、「今日の夜(مساء اليوم)」とか「明日(غداً)」などの未来の時制を表す副詞などを文中に入れることによって未来を表す、と習ったかと思いますが、方言でも同じです。
アルジェリア方言の場合には、رايح (ラーイハ)を未完了形の前につけると未来を表すことが多いです。
「私は書くだろう」
رايح نكتب
ラーイッ・ネクテブ
この「ラーイハ」の「ハ」は限りなく子音のみの音、息を吐くハッという空気音に近く、ひらがなの「は(ha)」のように 母音をしっかり発音しません。ほとんど「ラーイッ」に聞こえます。
それから、もちろん動詞の未完了形に「後で(أومبعد:アムバアド)」、「明日(غدوا:ガドワー)」などの言葉を付け足すだけでも問題ありません。
現在進行形
動詞の未完了形の前に、現在の状況を表す人称代名詞 راه を置くと、現在進行形「(今)~している」という意味になります。
「私はレポートを書いています」
راني نكتب التقرير
ラーニー・ネクテブ・ッタクリール
否定文
過去形の否定文は、動詞の完了形を否定語の ما(マー)と接尾語の ش(シュ)で挟みます。
「私は見なかった」
ما شفتهاش
マーシュフトハーシュ
※ マー(否定語)+シュフトゥ(私は見た)+ハー(彼女を)+シュ(否定語)
現在形の否定文は、動詞の未完了形を ما(マー)ش(シュ)で挟みます。
「私は聞いていません」
مانسمعش
マーナスマウシュ
現在進行形の否定文は、راه(ラーフ)の部分を ما(マー)ش(シュ)で挟みます。
「私は(今)働いていない」
ما رانيش نخدم
マーラーニーシュ・ナハドム
動詞の使い方まとめ
時制・種類 | 発音・意味 |
過去形 | كتبت クタブト 私は書いた |
現在形 | نكتب ネクトゥブ 私は書く |
未来形 | رايح نكتب ラーイハ・ネクトゥブ 私は書くだろう |
現在進行形 | راني نكتب ラーニー・ネクトゥブ 私は書いている |
否定形 | 【過去】ماكتبتش マークタブトシュ 私は書かなかった 【現在】مانكتبش マーネクトゥブシュ 私は書かない 【現在進行】مارانيش نكتب マーラーニーシュ・ネクトゥブ 私は書いていない |