預言者生誕祭(アル=マウリドン・ナバウィー)とは
昨日、11月20日はヒジュラ暦のラビーウ・ルアウワルربيع الأول月12日にあたり、イスラームの開祖であるムハンマドの誕生日、いわゆる「預言者生誕祭المولد النبوي」でした。
預言者生誕祭は、アラビア語では「アル=マウリドン・ナバウィー」とか単に「マウリド」などと言います。
この日は多くのアラブ、イスラーム諸国では祝日となっておりまして、各地で様々なお祝い事が繰り広げられます。
(※シーア派ではラビーウ・ルアウワル月17日が預言者生誕日となっています。)
一体、どんなことをするの?と思われる方のために、ここ数日の間にYou TubeにUPされた関連動画をいくつかご紹介して、現地の雰囲気を知っていただこうかと思います。
まずはエジプト中部ルクソールの預言者生誕祭の様子です。
続いて、スーダン(おそらく首都ハルツーム)のお祝いの様子です。
皆さん、とてもリズミカルに踊っています。長いので適当に早送りしながら見てくださいね。
こんなのもありました。シリア・ダマスカスの小学校にて。
子供たちが可愛いです。
というわけで、国、地域、宗派、教団によってやることは様々なのですが、人々が預言者を讃える定番の歌を歌いながら町を練り歩く、などがよく見られる光景です。
上の動画でも、صلى الله علي محمد صلى الله عليه وسلم
サッラッラーフ アラー ムハンマド サッラッラーフ アライヒ ワ サッラム
などという言葉が繰り返されているのが聞こえましたでしょうか?
これは「ムハンマド様の上に神様が平安をもたらしますように」といった意味になります。
また、特別なお菓子やお料理を作って家族でお祝いしたり、モスクでは特別なセッションやレクチャーが行われたり、街中では預言者と一体なんの関係があるのか理解しづらい大道芸のようなものが行われているところもあります。
爆竹大会と化したアルジェリアのマウリド
それからちょっと変わった例ですが、北アフリカのアルジェリアでは、ここ数年、マウリドといえば、「花火・爆竹大会」と化しており、火災やけが人も発生するほどで、消防隊員にとっては最も忙しい日となっています。
こちらは2015年のマウリドの様子で、タイトルは「アルジェリアの第3次世界大戦」となっています。
かなり激しいですね。。
銃撃戦が起きたのかと勘違いしそうです。どう見ても花火の使い方間違ってると思います。
なんというか、日頃の憂さ晴らしをする絶好の機会となっているようです。
今年のニュースによれば、「民間防衛隊المديرية العامة للحماية المدنيةは24時間以内に2900件の事件に対応、そのほとんどは預言者生誕祭における花火الالعاب النارية・爆竹المفرقعاتの使用関連で、火災13件」とのことです。
これでも「治安当局による取り締まり強化で爆竹による負傷者は大幅に減少تراجع كبير」とのことでして、昨年、一昨年に比べるとだいぶマシになったようです。
一体なんのお祭りなのか・・・という気がします。
もちろん、厳かにこの日を過ごす真面目なアルジェリア人も沢山います。
預言者生誕祭のお祝いに関する議論
以上のとおり、とても楽しそうな(一部、ちょっと危険な)祝日ではあるのですが、実は預言者生誕祭をこのようにお祝いすることに反対する人々もいます。
というのも、預言者生誕祭を祝う習慣は、10世紀頃にエジプトで興ったファーティマ朝الدولة الفاطمية時代に、宮廷の儀礼として始まったものだそうです。
これが後に一般庶民レベルのお祭りとなっていったのだそうですが、ムスリムにとって重要な聖典「クルアーン」や預言者の言行録「ハディース」には、「預言者生誕祭をこのように執り行うべき」という記述はないのだそうです。
そういうわけですので、ムスリムの中にも上記の国々で行われているような「預言者生誕祭」は非イスラーム的な誤った慣習であると反対している人もおり、いくつかの国(サウジアラビアなど)ではこの日は祝日にすらなっておりません。
預言者生誕祭は「スーフィー教団」の歴史と切っても切れない関係があります。この辺りについて知りたい方は、こちらの本もお勧めです。
いかがでしたでしょうか。
預言者生誕祭の雰囲気を少しでも感じていただけたでしょうか。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
では今日のところはこの辺で。マアッサラーマ!